蜜月溺愛心中

「ああ。椿なら構わない」

「ありがとうございます！いただきます！」

椿はコーヒー牛乳に口をつける。口の中にコーヒーのほろ苦さが広がって溶けていく。フルーツ牛乳より甘くなく、子どもが飲むと「大人の味！」と言うだろう。

「こっちもおいしいです！」

椿は清貴に笑いかける。清貴は何故か頰を赤くし、「おいしいのなら、よかった」と小さな声で呟く。何故小声で話すのだろうかと椿が首を傾げていると、たまたま一部始終を見ていたのであろう子どもの声が響いた。

「ママ〜！あのお姉ちゃんたち、イチャイチャしてる。お兄ちゃんの飲んだ牛乳、お姉ちゃん飲んでたよ〜」

そう子どもに言われ、椿は自分が何をしてしまったのか理解してしまう。清貴が口をつけた牛乳を飲んだ。これは少女漫画で登場する間接キスというものである。

「す、すみません！清貴さん！」

清貴は冗談のつもりで牛乳を「飲んでみるか？」と言ったのだろう。それを気付かず飲んでしまった。椿は何度も謝る。清貴はそれに対し、「こちらこそすまない」と返した。