蜜月溺愛心中
「揶揄うつもりで勧めたんだが、まさか本当に飲んでしまうとは思わなかった。すまない」

「い、いえ。これは私が悪いです。冗談だと気付かず、あんなことを……」

思い出しただけで泣きたくなってしまうほど、ただ恥ずかしい。しかもそれを人に見られていたのだ。清貴の迷惑になっただろうと、椿の中に罪悪感が降り積もっていく。

「……とりあえず、牛乳を飲んで部屋に戻ろうか」

清貴は前を向き、コーヒー牛乳に口をつける。その横顔は耳まで赤くなっていた。それを見てさらに顔を赤くさせた椿も、前を見てフルーツ牛乳を飲む。

二人の目の前には大きなテレビが置かれ、そこではバラエティー番組が放送されていたものの、椿の頭には何一つ案内は入って来なかった。

部屋に戻ると、すでに布団が畳の上に敷かれていた。それを見て椿は緊張してしまう。チラリと清貴の顔を何度も見てしまった。しかし、その緊張は杞憂に終わる。

「椿。そろそろ寝ようか」

清貴は電気を消すと、すぐに布団の中へと潜り込んでしまう。椿も、清貴の隣に並べられた布団の中へと入った。柔らかな布団の上に体を寝かせると、一日遊んだ疲れが押し寄せてくる。
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