蜜月溺愛心中
「おやすみ、椿」

「おやすみなさい、清貴さん」

挨拶を交わした後、数秒後に清貴の寝息が椿の耳に聞こえてくた。マンションでは寝室は別々のため、清貴の寝息を聞いたことはない。椿の胸に締め付けられるような感覚が走る。

(触れられなかった……)

安心したような、残念なような、複雑な気持ちになっていく。椿は清貴の方を見た。初めて見た彼の寝顔は、起きている時と同様に整っている。

(眠ってしまった白雪姫やいばら姫を目にした時、王子様はこんな気持ちだったのかな)

まるで人形のように美しい男性が布団の中で眠っている。しかし、その胸は上下にゆっくりと動いていて、彼が人形ではなく生きた人であることを告げていた。

椿は清貴の寝顔を見つめていた。その顔は少しずつ近くなっていく。清貴の長い睫毛、日本人にしては高めの鼻、ほくろ一つない雪のように白い肌、それらを芸術作品でも鑑賞しているかのようにじっくりと見た後、椿の目は清貴の唇に向けられる。
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