蜜月溺愛心中
「椿、ずっとそばにいてほしい。ずっとだ。ずっと俺の隣にいてくれ」

何度も唇を重ねた後、清貴は泣き出してしまいそうな顔で懇願する。椿は突然の初めてのキスに驚きや戸惑い、幸せなど様々な感情が混ざり合い、その懇願に答えることはできなかった。

しかし、胸の高鳴りが椿に感情の名前を教えていた。



真夜中、清貴は布団の中で目を覚ます。日本酒を飲んだ後のことを思い出し、顔を赤くさせた。大声を上げたいところだが、隣では椿が寝息を立てているため堪える。

「椿」

眠っている椿を清貴は見つめた。ふっくらとした淡いピンクの唇に目を向けてしまう。先ほど、清貴は彼女の唇を奪ったのだ。

「すまない」

暗闇の中、清貴の声が響く。誰もが寝静まった時間のため、その声はやけに大きく感じた。

「あの時、俺は酔っていなかった。酔っているフリをして俺は君に強引にキスを……」

清貴の耳まで赤く染まる。彼もまた、自分の気持ちに気付いていた。
< 98 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop