クズなアイツが惚れたなら、

これ以上、気遣いあうおとぼけ夫婦劇を見せられてたまるか。

バカバカしい。



寝たいんだよ俺は、と呟きながら、冷え込んだ夜をずんずんと歩いて駐車場まで来たところではっとなる。



……梅野、どうやって帰るんだ?


所持金500円程度でタクシーは払えない。

かといってバスはもうないし、駅もさっきよりは遠くないが、決して近くもないし、こんな時間なのに街灯も少ない。



「あー…くそ」


なんで梅野を心配しなきゃならないんだ。

俺には関係ない、この一言でどんな状況だって片付けてきたのに。




『帰るぞ俺は』と『いやでもな』を3回ほど脳内で争わせたとこで諦めた。


おとなしく足を止めて梅野を待つ。



30分くらい過ぎたころ、ようやく自動ドアをくぐって梅野が出てきた。



< 104 / 250 >

この作品をシェア

pagetop