クズなアイツが惚れたなら、
風に揺られて、コートがはためく。
その下では、カランと、音がして。
きっと誰にでも与えている特別でもないあめがひとつ、地面を転がっていく。
荒く引き寄せたのは、梅野の制服の襟。
そのまま、流れるように、ほんのわずか驚いたように開いた唇に、自分のそれを重ねた。
「……──っ」
鼻が触れている至近距離で、吐く息が混ざりあうように温度が上昇する。
不確かな熱が片方のものなのか、両方のものなのか、判断すらつかない。
もう一度奪ってしまえそうな唇に、思考が霞んでいく。
……なに、してんだ。
一番に聞きたいのは梅野のはずなのに、目の前の本人は微動だにしない。
そこにどんな感情が込められているのか、確かめたくなって、でもやめたくなって、それでも気になって、結局、逸らした。
「…悪い、まちがえた」
どうしようもないほど、呆れた言葉。
わかっているのに、そんなものしか出てこない。
どく、どく…と、呼吸が乱れている。
不規則な脈が心地悪さを吐き出すように急かせば急かすほど、思うとおりにいかない。