クズなアイツが惚れたなら、






「いらっしゃーい」


……なんで俺がこんなことに。

そう思いながら、にこやかな笑みを浮かべる直江に睨みを飛ばす。



「いやー、来てくれると思ったよー。さっすが氷牙〜」

「うるせー、暑苦しい」

「なに言ってんの、季節は真冬だよ」

「俺の肩にまわった手を離せってことだ」

「はっはは、了解」



調子のいい直江に引き連れられたのは、カラオケの一室。

分厚いドアでかろうじて塞がれていた中の盛り上がりが、開けた途端に流れこんでくる。耳がいかれそうだ。



「はいはーい注目ー! 遅れて登場のイケメンだよ〜」



ばっと視線が集中する。

女5人、男も俺を入れて5人。
なかには直江経由で会ったことのある顔も何人かいた。



「ほんとだ、超絶イケメン」

「まって、やだ、タイプかもー」



……あー、だるい。

さっそく寄ってきた女の好奇な目線に気分が乗らないのは、梅野のせいだ。
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