クズなアイツが惚れたなら、
最近の俺は、どうかしている。
「どうよ、調子は」
「ん?」
「なんか氷牙、ここんとこずっと、上の空だからさ」
「……べつに、どーも?」
「まーたそうやってはぐらかす」
「なにがだよ。つかおまえ、なんで今日呼んだんだよ、単なる人数合わせじゃねーだろ」
「ピンポーン」
傾いたグラスからメロンソーダを流し込み、直江がへら、と笑う。
「顔のいい氷牙が現れても、手のひら返さない女の子がいいなーと」
「そんなことだろうと思った」
「はは、わかっててきてくれたの? やさしーじゃん、氷牙……珍しく」
余計な言葉をひっつける直江に、おい、と対抗する。
「気づいた? 会って速攻で氷牙の名前覚えられてんのに、俺はあなたとか呼ばれてんの。悲しいねー」
ほんとに悲しんでのかよ。
ため息を吐きながらも笑っている直江は、普段からあまり暗い顔をしない。だから判断もつきにくい。