クズなアイツが惚れたなら、
「あ、布瀬くん、まだ体調よくなくて今日お休みしてるの。ほら、この間貧血で倒れたでしょう? 昨日頑張って来てみたら悪化したみたいで…」
大丈夫かな、と。途端に心配しだす梅野に呆れる。
自分の噂はどーした、おい。
……ふん、布瀬のやろう、大事な時にいないなんて、なにがナイトだ、偽ナイトめ。
これだから俺が動かなきゃいけなくなったんだ、と。攻撃だけは偉そうに心のなかで湧き出てくる。
「夜市くん、意外だね。助けてくれると思わなかった」
「俺も思わなかったわ」
両親がずっと互いに一筋なとことか、直江がたまに語る綺麗な恋愛とか、理解できないしバカにもしてきたけど、梅野だってきっと、あいつらみたいにちゃんとした恋をする部類の人間で。
そこに入れない俺は、相変わらず身動きもとれずにのさばっている。
なのにさっきは、梅野をほかの誰かにとやかく言われたくはなかった。だから動いた。
「…梅野、学校サボるか」
ポツリとそう落とせば、きょとんとした梅野の瞳がビー玉のように丸まる。
『かわいいな』だとか、そんなことを言ったら、こいつはどんな顔をするんだろうか。