クズなアイツが惚れたなら、






午後1時。

冬の晴天は柔らかく、雲の隙間から眩い光が往来して思わず目を細める。



「どこ行きたい?」

「急に言われても…」

「なんだよ、まだ落ちこんでんのか?」


キョロキョロと辺りを見渡しては俯く梅野。



「そうじゃなくて、夜市くんは慣れてるんだろうけど、わたし、学校さぼるなんて初めてで、」

「そうだろうな」

「…ドキドキする」

「………は?」

「ドキドキするの!」

「………ふっ、」



なんだ、ドキドキするって。

てっきり、いけないと思うんだとか真面目に語るのかと思いきや、唐突に幼くなったようなことを言い出す梅野に吹き出す。


目的地もなく漂っていると、しばらくして、ぴたと梅野の足が停止した。




「みて、夜市くん、ゴールドのうさぎ」


ガラス張りの向こうのそれに視線を移す。通りに設置された小さなUFOキャッチャーのなかに、たしかにゴールドのうさぎが見える。

ひとつだけあるそれは、ほかのぬいぐるみとは違って目立っていた。

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