クズなアイツが惚れたなら、






梅野と話すこともないまま、あっという間に日が暮れ、終礼になる。


「はい、さようなら」


先生の言葉でもう鞄を持ちかけていた約半数が一瞬にして帰っていった。




「うめ…(ゆい、行こう)」


声が重なって先を越される。

相手は布瀬だ。

目が合うと気まずそうに逸らされ、その視線は梅野に微笑む。



なんだよ、行こうって。
布瀬と約束でもしてんのか?


梅野は呼びかけた俺に気づきもしないまま立ちあがる。



「布瀬くん、今日わたしバイト」

「うん知ってる、送ってくよ」

「体調はもう大丈夫なの?」

「へーき」



行こう、と。梅野の鞄を待った布瀬に小さな足がついていき、教室を出ていった。

途端に足から力が抜ける。


「……なにしてんだ、俺」


仕方なくひとりで昇降口へ向かっていると、通りがかった保健室から背伸びをしながら誰かが出てきた。


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