クズなアイツが惚れたなら、
「どの本だよ」
「サルの共食い」
「……」
ずいぶんな題名だな。
なんだよ、サルの共食いって。
そんな本あんのかと思いつつ、本棚に目を走らせる。
すると、左端から2番目にほんとにあったその本を手に取って梅野に渡した。
「ありがとう」
「どーいたしました」
「ふっ」
「…なんだよ」
「どういたしまし"て"じゃなくて、"た"なんだ? それってもはや、あれだね、どーいたしましたかって聞いてるようなもんだね」
ふふ、と自分で言ったことにまた笑う梅野。
「…なんも面白くねーんだけど」
「うん、そうだね。ごめん、つい」
つい、じゃねえんだわ。
こいつ、絶対ツボおかしいだろ。
「邪魔してごめんね、どうぞ、寝て」
サルの共食いを持った梅野は上機嫌で前の方のイスに座る。