クズなアイツが惚れたなら、
家までの道のり残り半分。
いや、いつも別れる分かれ道まではもっと近い。
湧き立つ焦りが鼓動を速める。
頭上では、どうしたらいいんだが駆けずり回っていた。
デートって、どう誘うんだよ。
だいたい、どこ行けばいいんだ。
家か?………ばかやろう。
直江がいないせいでひとりでツッコむはめになり、頭を抱える。
こんなことなら、聞いときゃよかった。
「梅野」
「うん?」
「おまえ、あれか………どっか行きたいとことかあるのか?」
「行きたいとこ?」
突然なんだと言いたそうな顔は充分に理解できる。とくに深く考える素振りもなく、「えーと」と梅野は言葉を続けた。
「行きたいというか、もう行くって決めてるとこならある」
「どこだ?」
「新しくできたケーキ屋さん。さっき通ったとこの大通り沿いにあるんだけど、来週の土曜日にね、オープン記念で全ケーキが半額で食べれるの!」
ぱあっと梅野の瞳が輝く。
話を聞いていると、どうやら梅野は、あめの次にケーキが好きらしい。とんだ甘党だ。