クズなアイツが惚れたなら、
触れたい温もり



*

*


梅野とのデート当日。

バタバタと家中動きまわる俺を物珍しそうに見る両親。この間のやり取りを概ね伝えた直江には「それはデートなのか…?」と首を傾げられた。


学校のない休日に梅野と会えるんだから、デートでもなんでもいい。


約束の14時まであと20分。
待ち合わせ場所は、大通りにある噴水付近。
そろそろ出てもいいころだ。




「母さん、あれ、マフラーは?」

「あー、準備してあるよ、はい」



綺麗に洗濯しといてくれと頼んだ梅野のマフラーが入った紙袋を渡される。受け取ってお礼を言うと驚く母さん。失礼にも程がある。自分の息子をなんだと思ってんだ。



「氷ちゃん、それ、女の子のでしょ」

「は、」

「だって端に蝶々がついてるもの。ね、女の子から借りたんでしょ?」



ふふふふと伸びた微笑みはスルーして玄関に向かった。



靴を履いて外に出ると、午後の太陽が肌を差す。見上げれば、晴れと曇りを織り交ぜたような空があった。昨日降ったであろう水溜まりに足を突っ込まないように注意深く歩く。けれど。


───5分くらい進んだところで、突然、足先が浮いた。




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