クズなアイツが惚れたなら、
あちこちに置かれた調味料。
飛び散っている謎の白い粉。
ぐしゃぐしゃの卵の殼。
昨夜から朝でここまでの有様になったのが、俺に朝ごはんを作るためだとわかって、なぜか自然と口元が緩んだ。
「フレンチトーストを作ろうと思ったんだけど、うまくいかなくて、それで目玉焼きに変更したの」
「目玉焼きって…………これか?」
「う、うん」
水玉模様の皿に乗っかった目玉焼きは、半分程焦げ茶色に染まっている。横にはミニトマトが添えられていた。
顔を伏せている梅野に視線を移す。
すると、丸まった左手に昨日はなかった絆創膏が見え、思わず近寄った。
「おまえ、指切ったのか?」
「あ、これ? うん、さっき、ミニトマトを半分にしようとしたら、ちょっと切れちゃって」
「慣れないことするからだ」
「大丈夫だよ、そんなに痛くなかったし」
ぶんぶんと左手を振ってみせる梅野を、やめろと制止する。
どうやら、こいつは意外に不器用らしい。
「ごめんね、料理得意じゃなくて」
「できそうなのにな」
「わたしが?」
「あぁ。いつも学校で見る梅野は結構なんでもこなしそうな顔してる」
「ええ?」
そうかな、と梅野が首を傾げる。