クズなアイツが惚れたなら、
「っ、いってえっ…」
「当たり前でしょう」
突然降ってきた衝撃に、ぽかんとする。
ビンタでもない。
頬を挟むように両側から食らった手打ちは、半年前に打った予防注射よりはるかに痛い。
「なにすんだっ」
「それはこっちのセリフ!」
「っ……だとしても限度ってもんがあんだろうが」
「人を利用しておいて、そんなものないよ」
開いた口が塞がらない。
なんだよ、梅野。
こいつ、こんなに気が強かったのか。
今まで困らせてきたやつらとはまた違う、明らかに新種。
「謝って」
「ふん」
「……」
「…悪かった」
今にも2発目が飛んできそうな睨む目に、渋々、謝罪を入れる。
次からはやめてよね、と腕を組む梅野。
この間あげたあめだって返してもらいたいくらいだよ、と続けられた言葉には、心の内で反論しておいた。
そもそもまだ食ってねーよ。