クズなアイツが惚れたなら、
気づかされた当たり前



*

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12月の後半に突入し、寒さも本格的に増してきた。そして世間は近づくクリスマスに胸を躍らせている。

街中は赤や緑などの色で溢れ、朝の番組でも「いよいよですね」とアナウンサーが笑顔を浮かべて。至るところでクリスマス関連の宣伝がされていた。


そんな中、



「夜市、進んでるか?」



俺は図書室にいた。



真下に広がるのは、色紙で作成したクリスマスツリーと雪だるま。

さっき張り付けた箇所が剥がれてきて、うんざりした顔をあげれば、向かいで担任も同じように顔を歪めていた。




「なんで俺がこんなこと…」

「おまえが俺に見つかったからだな」



わははと豪快に笑う担任を真顔で威圧するも、この手のタイプには全く効力はない。

職員室の前を通った俺に、「ちょうどいいところに来た」と目を輝かせて教師の特権である『頼み事という名の強制雑務』を振りかざれたのはついさっきのこと。




「もうちょっと粘着力のあるのり持ってきてくださいよ」

「だよな、これ貼りにくいよな」



他人事のように呑気な担任の手元には、俺よりも下手な雪だるまが完成している。


いつもなら速攻で張り切って帰宅の俺が、クリスマスまで図書室に飾る工作をこの時間になっても手伝っているのは、あとで図書委員の梅野も来ると言われたからだ。

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