クズなアイツが惚れたなら、
……いつ来るんだよ。
かれこれ30分は作業しているのに、一向にドアが開く気配はない。
苛ついてそろそろ雑になってきた雪だるまの目がこっちを悲しそうに見上げてくる。
もういっそのこと帰ってしまうか、と。脚を投げ出したところで、やっとガラガラと音がした。
「すみません、お待たせしました…っ、え、」
夜市くん?とやや驚いた梅野が上履きをきゅっと鳴らす。
だけど、驚いた顔はひとつではなかった。
………なんであいつまでいるんだ。
梅野の隣から布瀬が現れた瞬間、どこからともなく黒い感情が宿る。そしてその不満は、おそらく顔にも乗っかってしまっているだろう。
向こうも大抵同じような表情だ。
担任と梅野だけがぽかんと互いに目配せをしている。
「待ってたぞ、梅野。えっと、君は、他クラスの…」
「布瀬です」
「おー、布瀬も手伝ってくれるのか?」
「はい、俺でよければ」
「助かるよ、まだ半分しか終わってなくてな」