クズなアイツが惚れたなら、

そこ座ろうか、と指した席に梅野が腰を下ろし、布瀬もちゃっかり梅野の隣をキープする。



「俺と夜市はこれ終わらせるから、ふたりはカラフルの輪っか作りお願いできる? 見本ここにあるからさ」

「はい、わかりました」



ちら、と梅野と目が合ったけれど、それはすぐに逸れ、話している布瀬へと移される。

ただでさえ静かな図書室で、俺と担任、梅野と布瀬の間に完全なる壁が隔てられた。




そしてこういう時だけゆっくり進む秒針は容赦がない。


向こうではどんな談笑をしているのか、時々楽しげに緩む梅野の横顔が覗く。

そんなに遠くに座らなくてもいいだろと思う俺は、相変わらず不満を全部詰め込んだような顔をして、黙々と作業を続けるしかなかった。




「わたし、折り紙もうちょっともらってくるね」

「俺も行こうか?」

「ううん、大丈夫」


「あー、俺もちょうど色紙ねーから、梅野と一緒に行くわ」




じゃあふたりは続けるってことで、と。
職員室に用のある梅野と担任だけが一時図書室から出ていく。

必然的に、そこは、俺と布瀬のふたりだけになってしまった。


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