クズなアイツが惚れたなら、
「んで? どっちと帰んの?」
託された選択権を前に梅野の瞳が揺らぐ。
ゆらゆらと俺と布瀬の間を往来していた視線は、すっと俺寄りに一旦停止したけれど、
「…布瀬くんと、帰る」
瞬きの合間に向こうに逸れてしまっていた。
「うん、行こう」と布瀬が開けたドアを梅野もくぐる。
「じゃあ……夜市くん、また明日」
ぎこちない様子で最後に俺を捉えた梅野が、手でも振ろうと思ったのか迷いながら途中まで上がっていた腕を結局下ろして背を向ける。
……なんで俺じゃないんだ。
たかが帰り道。されど帰り道。
選ばれなかった不満と共に視線を落とすと、ガタッという音がした。見てみれば右側のもうひとつのドアが開いている。
「…あはは、見えちゃった」
「……てめえ」
「友達にてめえはないでしょ、てめえは」
俺らも出よう、と急かす直江に気乗りしないながらも足を動かす。
結局俺は、こいつと帰る運命か。
「いて」
一部始終を目撃してやがった直江の頭を軽く小突いて図書室を出た。