クズなアイツが惚れたなら、
紛れ込む感情
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昼休みが終わって一番に言われた言葉は、
「氷牙くん、大丈夫!?」
「ほっぺ、赤くなってるよ」
……梅野め。
挟み叩かれた頬は喋るたびにヒリヒリと痛んで、数十分で周りから見られるまでになった。
自業自得と言われればそうでしかないが、梅野の飄々とした態度が苛立つんだ。
次、ふたりになったら、どうしてやろうか。
…いや、おい。
次なんてなくていいだろ。
むしろない方がいい。
「なに珍しく百面相してんの?」
窓際で頬杖をついていた俺に、ひょろっと横から直江が顔を出す。
「おまえ、いっつも暇なのか?」
「うわー、それ言う? おまえは女の子に困ってないんだろうけど、俺は彼女のひとりもいないの。休み時間にこうしてわざわざ隣のクラスから来てくれる友達をもって光栄に思いなさいよ」