クズなアイツが惚れたなら、
連絡先がすっきりしたことで劇的に変わったことといえば、圧倒的に女が周りに群がなくなったこと。
一番に報告した直江には、「氷牙にしては行動早かったじゃん」と褒められたりもして。
そうして迎えた木曜日。
お昼の学食で得られた満腹感と午後の陽だまりが運んできた眠気に逆らわず目を閉じた。
明日は終業式で明後日からは冬休みに入る。
「夜市くん、今いい?」
特に予定もない2週間をぼんやりと想像していると、梅野が横から顔を覗かせた。
心地のいい黒髪が宙になびく。
「今日提出の課題、やった? 日直で集めてるんだけど、あと夜市くんだけで、」
「…あー、やってねぇ」
「じゃあ、放課後提出まで待つから、やっとくんだよ?」
「見してくんねーの?」
座ったまま見上げた俺に、ふるふると左右に揺れる首。
そういうとこはしっかりしてんな、と思わず笑みが溢れる。
「でも、わからないとこあったら、いつでも聞いてね」
無垢な笑顔が目の前に広がった。
チャイムの音で席に戻っていく梅野の後ろ姿を見ながら決意する。
よし、絶対聞きに行こ。