クズなアイツが惚れたなら、
すれ違いとキューピッド
午後3時。
厚い雲の入れ替わりで気まぐれに注がれる陽の下、俺は梅野の家を目指していた。
つーか、マジで寒い。
気温何度だよ、これ。
からからした風で乾燥するわ、滑り込む冷気でくしゃみは出るわ、やっぱり冬は嫌いだ。
鼻先を擦りながら小走りで進む。
幸い、俺の家から梅野の家までの距離は近い。
体感およそ10分で足を止めた。
来るのは2度目になるアパートが視界に映る。
一度深呼吸をしてどう話すか整理でもしようとしたその時、見慣れた人物が外にいることに気づき、その場に留まった。
「……なんで、あいつが…」
妙に薄着の布瀬が佇んだまま動かない。
なにしてんだと声をかけるつもりが、開いたドアから梅野が出てきて反射的に木陰に隠れてしまう。
「………っ、」
そこからはスローモーションを見ているようだった。