クズなアイツが惚れたなら、
喉元が締め付けられるように縮こまる。
久しぶりに顔をあげて見た梅野に心臓が動いてしまうのが悔しかった。
「あの、この間の……」
「それならもういい」
「……え?」
瞬いた瞳が動揺するようにゆっくりと揺れだす。
どうして、と聞かれているようだった。
でも、それを聞きたいのはこっちだった。
「返事ならいらねーから」
「……なんで、」
「なんでもいいだろ、梅野に関係ない」
無茶苦茶なことを言っている。わかってる。
それでももう、話したくなかった。
あいつと……布瀬とそういう関係になったなら、俺なんか気にしなけりゃいい。
どうせ梅野のことだから、俺の告白を曖昧にせずに、ちゃんと断ってからとか、そういうことを考えてるんだ。そんなのはうんざりだ。
どけよ、と言うように目に鬱陶しさを乗せれば、怯んだ梅野の肩が揺れる。
けれど次の瞬間には、腕を掴まれていた。
「待って…」
「………」
「ほんとに話があるの。夜市くんに大事な話が…」
「うざい」
「っ…」
「聞きたくねーって言ってんの」
振り解いた先で小さな瞳が悲しげに萎んでいく。
喉元からせり上がってくる入り乱れた感情は制御不可能で。
荒れた勢いでそのままこいつを連れ去ってしまおうか、なんて。そんな馬鹿げたことにはならないように、立ち尽くす梅野を前に背を向けた。