クズなアイツが惚れたなら、



「…梅野から聞いた、母親、大丈夫か?」

「そこは心配してくれてるんだ?」

「うるせー」

「大丈夫だよ、もうほぼ回復してる」

「そうか」




それ以上話すことがなく、顔が下がる。


もう行った方がいいか、と思っていると、「夜市」とクリアな声に引き止められた。




「ありがとう」

「は?」

「ゆいが笑ってた、毎日楽しいって。だから、ありがとう」

「……礼なんて、」

「うん、気分悪くても許して。俺が勝手に感謝してるだけだから」




そう言って真っ直ぐ俺を見る布瀬。

悔しいけど、ずっと梅野のそばにいたこいつは、いいやつなんだと思ってしまう。


…だからやっぱり気に食わない。

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