クズなアイツが惚れたなら、
「…だ、めっ……よいちくん…」
「そーいうの、逆効果」
甘ったるく息をあげながら、抵抗が抵抗になってない梅野の顎に手を添える。
もう一度触れようとしたところで通行人の気配がして、さすがに梅野が俺を引き剥がす。チッと舌を打つと「もう」と怒られた。
「もうすぐ新しい学年になるし、そしたら梅野とクラス離れるかもな」
「でも放課後は一緒に帰るよ?」
「花音や布瀬が寄ってくんだろ」
「夜市くんと一緒にいたいときは、逃げてくる!」
「ふっ(毎日でいいな、それ)」
少ない街灯の下を歩いて、木が3つある角を曲がってしばらくしたら、梅野のアパート。
到着してしまい、名残惜しくも「じゃあな」と手を振ると、きゅう、と裾を引かれた。
「もう帰るの?」
「…は?」
「まだ、いて」
「おまっ……俺を試してもいいことないぞ。狼に喰われるだけだからな」
「……夜市くんなら、いいよ」
「っ…(こいつ本気で言ってんのか)」
澄ました風にしているけど、おろおろと瞳は揺れていて。スカートの横でぎゅっと握られた拳。そんな梅野が愛おしくて敵わない。
できるだけ優しくキスを落とす。
────あーもう、きっと
「結構がちで、離してやれねーわ」
変わらない想いはあるのかとか、そんなこと、わかんねーけど。
俺はもう、梅野しか見えなくていい。
それがいい。
.。◑
番外編こちらで最後となります。
お付き合いくださり、
ありがとうございました!