クズなアイツが惚れたなら、
「…梅野…っ、おまえ、いいかげん、とまれ」
「夜市くんが先に止まって…っ」
「追いかけねーから、梅野が止まれ」
「……ほんと?」
「あぁ」
頷いたところで、梅野の足がようやく停止した。
俺はなんでこんなとこまで走ってんだ。
今更、そんなことが頭をよぎりつつ、梅野の近くまで歩いた。
「隙あり、だな」
「っ、」
やっと追いついた梅野にデコピンを食らわす。
「ふはっ」
いったい、と顔を歪めた梅野が思ったよりも間抜けな表情で笑ってしまう。
「暴力反対…」
「俺の頬に攻撃したのは梅野だろ」
「そ、それは、相当の対価ってやつで」
こいつ、口だけは達者だな。
ていうか、足速すぎだろ。
べつに俺だって自信があるわけじゃないが、それでも梅野にくらい追いつけるだろうと思ってたのに。