クズなアイツが惚れたなら、

「…なんか、夜市くん、思ってたのと違う」

「は?」

「そんなふうに笑うんだ」


どんなふうだよ、と思いつつ、身体に意識を向けると、感覚で気づいた。

自分の頬が自然に緩んでいることに。



……なんだ、これ。梅野相手に。


紛れ込んだ違和感を掻き消すように喉が勝手に上下する。



「そーいう梅野こそ、意外とバカだろ」

「なっ、わたし、バカって言われたことはあんまり…」

「じゃあ俺が第一号だな」



イメージと違うのはお互い様で。

もっとクールなかんじだと思ってた梅野は、結構ギャーギャー喚く。

たぶんこれは、クラスの連中も知らない。




意外と絶えない会話を交わしながら、公園に寄り道をして水道で顔を洗った。

それからブランコに乗りたいと足を乗せ出した梅野にも数分付き合ってやった。


やがて見えてきた前と同じ分かれ道。

梅野はこっから反対方向に進む。



「はい、今日のあめ。ここまで一応送ってくれたし」

「…ん」



手のひらに落とされたあめふたつ。

どうせ好みじゃないから食べないくせに受け取ったそれを見て思った。



……梅野といるのは、案外面白いかもしれない。



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