クズなアイツが惚れたなら、
面倒なのには関わらない






「あら、氷ちゃん、おかえり」


ガラガラと玄関の扉を開けると、中から待ってましたと言わんばかりにエプロン姿の母さんがひょっこり現れた。



「もう晩ご飯できてるわよ」

「あぁ」


先に座っていた父さんは、目の前の料理を食べているわけでもなく、テレビを見ているわけでもなく、口角を限界まで上げた状態でこっちをひたすら眺めている。



「おかえり、氷牙。ほら、早くここに座ってみんなでご飯にしよう」

「そうね!」



おとなしく席につくと、いつもの手合わせがはじまり、いただきますと一斉に発して箸を手に取る。

両親のおかげで身についたこの習慣を学校でやった日には、直江に似合わないとめちゃくちゃ笑われた。



「おいしいよ、このハンバーグ」

「ほんと!? 良かった、今日はチーズインにしたの。前に食べたいって言ってたから」

「それ、覚えててくれたの?」

「もちろんよ」
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