クズなアイツが惚れたなら、(旧・プレイボーイが落ちるまで)

「…あ、悪い」


どうやら鎖骨に歯が当たっていたらしい。

手で拭き取って体勢を起こすと、はぁ、とため息を吐かれた。



「なに、考え事?」

「まあな」

「へぇ、珍しいじゃん」



面白がるように瞳を細めるのは、遊び相手のなかで唯一の年上。つまりは女の先輩。



「ていうか、氷牙、あんた、ナコのこと振ったでしょ」

「は? だれ」

「あたしの友達。人前で勇気振り絞って告白したけど遊びならいいって言われて断ったら、冷たい目でバイバイされたって泣いてたのよ」

「あー、いたな、そんなの」



適当な返答に、まったくもう、と言って首を振る先輩。


…放課後のあの女か?

俺にしてはやんわりと現実を教えてあげた方なんだが、泣いたのか、そうか。

でもしょうがない。

そんな話を聞いても胸のひとつも痛まないこんな俺を好きになったんだから。
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