クズなアイツが惚れたなら、
…いちいち細かい梅野め。
女神のくせに、そんな性格でいいのか。
心のなかで悪態をつきつつ、咳払いをひとつ。
「教えてくれ」
教えを請うなんて初めての俺にはこれが精一杯。
言い方を少しだけ変えて梅野を見れば、考えるように数秒視線を止めて。
やがて、答えが落ちてきた。
「ムリ」
「なんでだよ」
「だ、だって、なんか夜市くんに勉強教えるって、いろいろと苦労しそうなんだもん」
「失礼なやつだな、こう見えても上達は早い方なんだぞ」
そうなの?と疑い深い目線を向けられて苛立つ。
どうしてこうも、梅野ってやつは、俺の静かな感情に波を立てるのか。
だいたい、隣のやつとノートを広げてやってるそれはなんだよ。勉強じゃねえの? だったらなんで俺だけダメなんだよ。
「そいつには教えんの?」
「え? 布瀬くんとは一緒に勉強してるだけで」
「じゃあ、それ、俺も加わるわ」
反論を聞く前に、適当にイスを引いて梅野の隣に座った。