クズなアイツが惚れたなら、
「えー、どんな子なの?」
「いるんだよ、謎の本好きの女が」
「なにそれ、意味わかんなーい」
あたしとも遊んでよ、と話を聞かないやつまで寄ってきて少し鬱陶しくなってきた。
それでも笑顔を保って、また今度な、と頭を撫でてさえやれば、途端にしおらしくなる女。
もーしょうがないな。
今日はわたしが折れてあげる。
そう言って、身をよじりながら引き下がる。
やっぱり女は扱いやすいのがいい。
チャイムが鳴って散らばっていく人影を前に、そう思った。
放課後はすぐにやってきた。
帰っていく足音を耳に入れながら机に突っ伏していると、何人かの女に話しかけられもした。
それをやんわり断って人が少なくなるのを待つ。
「夜市くん、もしかして、今日も国語やるの?」
数分後、立ち上がった梅野が俺の席まで来ていた。