クズなアイツが惚れたなら、

呼び出しボタンを押して待っていると、しばらくして足元が見えて、


「…げっ」


俺と目の合った店員が声を漏らした。



………は?


突然のことでポカンとする俺をよそに、一瞬止まっていた足を再び歩ませて近くまできた店員。

何事もなかったかのように、ご注文はお決まりですか、と声をかけられる。


いやいや、おい。
今、げっ、つったよな?


知り合いかと思い、観察してみる。


店員の帽子にマスクをしていて、目元しか判断材料がない。

だけど、その目には、たしかに見覚えがあった。



「…梅野(うめの)、おまえ、ここでバイトしてんの?」



俺の問いかけに微かにビクッとする肩。



「お客様、ご注文を…」



どうやら、話しかけられたくないらしい。
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