クズなアイツが惚れたなら、
一度も自分からはしたことがない。
それくらい、キスは俺にとって苦痛だ。
それでも今は誰でもいいから、憂さ晴らしが必要だった。
それもこれも梅野のスパルタな教えのせいだ。
花音の腰を引き寄せてなお頭に浮かぶ梅野を空気にぼやかして睨む。
「やーだ、氷牙、今日、積極的」
身体のラインに沿って手を這わせれば、すぐに顔を赤くした花音が俺の制服をぎゅっと掴んだ。
「はーい、そこまで」
いいムードに誘導したのに、急に響いた女の声に後ろを向くと、保健室の先生が机から顔を出していて、驚いて手を止める。
「先生、いたんですか」
「ずっとね。あなたたち、今日という今日は出てってもらうわよ。ここはわたしの職場なの。いかがわしい写真撮られたくなかったら、おとなしく出なさーい」
携帯をひらひら揺らされた。