クズなアイツが惚れたなら、
扱いやすい女でいいと思っていると、どこかから隙間風が迷い込んで髪を撫でた。
「………」
追いかけるように奥に視線をやると、ちょうど反対方向から梅野がやってくるのが見える。
その隣には布瀬もいた。
大きな荷物を分け合って持っているふたりは、楽しそうに笑いながら歩いている。
「どこ行こっか?」
俺の肩に頭をすり寄せた花音が上機嫌で呟く。
そうだな、と交わした会話に気づいた梅野と目が合った。
すれ違う瞬間、本来なら俺らが譲るべき通り道を堂々と歩く。
どかないことをわかっていたかのように布瀬が男らしく一歩引いて梅野を先に進ませる。
あいにく俺は、あいつのような優しさは持ち合わせていない。
ふたりをどこか冷めた感情で見据えながら、花音には得意の笑いを繕った。