クズなアイツが惚れたなら、
少しずつ、絆されて
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「なにしてんだ、梅野」
「掃除」
俺の問いかけに、見たらわかるでしょ、と言いたげな目線で呟かれる。
そこには梅野ひとりだった。
こいつは基本、損な役回りをする。
軽くいじられているような現場だって、ターゲットがつらそうな顔をしていれば、すぐに声をかけてやめさせたり、クラスの間でたまに指示される『あいつ、うざいからハブろうよ』みたいな誘いにも全く乗らない。
澄ましたなかに、どこかあどけなさもあって、優しいだなんて、男から好かれるわけも納得はいく。
ただし、その反面、女からしたら目障りだろう。
いまだって、どうせ、押し付けられたに決まってる。
だいたい大掃除なんて放課後にするもんじゃないだろ。
部活があるやつは免除だし、そうじゃないやつも適当に切り上げて帰っていく。
俺だって、そのひとりで、6限目が終わってすぐに先生に職員室に連れてかれさえしなければ、さっさと学校を出たのに。
花音はうまく逃げやがって、俺だけサボりの説教をくらって、必然的に教室にある鞄を取りにきたら、梅野がいたわけで。