クズなアイツが惚れたなら、
…やっぱり、こいつは、知れば知るほどおかしい。
まず、テンションがわからん。
とろそうな梅野ひとりで大掃除なんて、いつ終わるんだと思いながら、床に用意してあったバケツと雑巾を手に取った。
とりあえず、えっと目を丸くした梅野は軽く無視をして手洗い場へ向かう。
「夜市くん、掃除できるの?」
絞った雑巾で端から拭こうと手を伸ばせば、しゃがみ込んだ梅野が聞いてきた。
「できるわ、掃除くらい。これでも俺は、綺麗好きなんだからな」
「ええ、意外」
「おまえはいつまで埃はらってんだ、朝までやるつもりか?」
「丁寧にやってるの!」
もう、と頬をふくらませる梅野に笑う。
梅野は意外とすぐ拗ねる。
迫ってくる日陰に追われるように、せっせと手を動かした。