クズなアイツが惚れたなら、
「ほんとに?」
最後のチャンスだとでもいうような試す視線。
引っかかりは覚えたものの、構わず、どうでもいいとそう答えた。
これで会話は終了。
もう一度、顔を腕のなかに埋めようとする。
瞬間、高級そうな匂いを纏った唇が歩み寄った。
「最近、梅野さんと仲良いんだね」
赤い口が笑う。
どくり、と。心臓が不気味な音を立てる。
「どういう意味だ」
静かに席に戻ろうとした花音の腕を、なぜか、強くつかんでいた。
乾いた声と揺れた机に、周りの視線が集まる。中心が俺と花音であるから、余計に。
「痛いよ、氷牙」
「どういう意味だよ」
「聞かないって言ったじゃん」
「答えろ」
クラス中が静まりかえる。
この状況を、花音はひたすらに楽しんでいるようだった。
情報がどうのって。
つまり、それは、梅野のなにかってことか……。