クズなアイツが惚れたなら、
こいつは人脈が広い。
それを使って梅野の弱みでも見つけたか。
………厄介だ。
「答えろ、花音」
「なにを?」
「とぼけんなよ」
「ねぇ、なに怒ってるの?」
挑発するような笑い声。
腕を離そうとしない俺を悪者と見た周りの数人がやめろよと無責任に言葉だけを飛ばしてくる。
「なにを知りたい?」
「さっきの、最後の言葉は、どういう意味だ」
「だからなんのこと?」
「おい」
「だからさあ、」
被さった声に、しつこいと言われている気分になる。
花音が奥底で勝ち誇ったような笑みを浮かべている気がした。
「最後のってなに?
知りたいことってなに?
氷牙が花音を引き止めてまで、そうまでして興味のあることって………なに?」
面倒事が溜まっていく。
少しずつ、俺の楽な脳内を侵食するように。
「数学のテストはじめるぞー……って、なんだ、この空気は」
教室に入ってきた先生を境目に、足音がバタバタと動きだす。
結局、花音からはなにも聞きだせなかった。
いや、もう話す気がないことくらい、わかっていた。