クズなアイツが惚れたなら、
「ごめんねー、急に同席しちゃって」
「いや、わたしはぜんぜん」
「布瀬も、ごめんね」
「ううん、大丈夫、ちょっと驚いたけどね」
その『ね』は俺に向かって言ってんな。
布瀬がわずかだけ視線を寄越す。
そこに込められた感情を読みとるのも、なにもかも億劫で、雑に包装を開けた手でサンドイッチを口元に運んだ。
「今日のテスト、数学がむずかったよなぁ。どうだった? 布瀬は」
「俺は結構いけたよ」
「おーさすが。俺、時間足りなかったあー」
直江がうまく空気を和ます。
こういうところは単純にうまいと思う。
「ゆいは? テスト大丈夫だった?」
「うん、できたと思う」
「よかった。頑張ったね、勉強」
「あ、布瀬くんが教えてくれたとこも出たよ。おかげで助かった」
こいつらはテストの話しかできねーのか、つまんねぇ。
自分だけ溶け込めていない邪魔者感に苛立って、サンドイッチを握る力がより強くなる。