クズなアイツが惚れたなら、
慣れた手つき、表情。かまぼこと同じように、そのあめも習慣になっているような、そんなかんじ。
思わず立ちあがる。
「俺、もう行くわ」
「えっ、氷牙」
直江が後ろでバタバタしだす。
なにしてんだ、俺は。
梅野がいつもくれるあめ。
あんなのは、べつに、ただのあめで。
感謝のしるしとして渡してくるそれを、ほかのやつがもらっていたって、なんらおかしくはない。
むしろ普通のことだ。
「おい、氷牙」
「なんだよ」
「なんだよっておまえ、変だぞ、明らかに」
「なにが」
「急にゆいちゃんとこ座るし、かと思ったらなんも話さないし、挙げ句の果てに怒ったような顔して去るって、」
なにがしたいんだよ、と。
おもいっきり眉をしかめられる。
……そんなの、こっちが聞きたい。
花音に気をつけろって、そう言うはずだった話さえできずに、動揺してそれどころじゃなくなるなんて。
こんなのは、らしくない。
俺じゃない。