クズなアイツが惚れたなら、






……一刻も早く、帰って寝たい。

そうすれば、こんな正体不明のモヤモヤはふっ飛ぶはずだ。

そう言い聞かせ、どこか重みを感じる肩をよろめかせながら廊下を歩く。




下駄箱が見えたところで、思わず立ち止まってしまったことを後悔した。



「………、」


静止した上履きが高い音を鳴らして、ちょうど前にいた梅野と目が合ってしまう。

…最悪だ。


なんでこのタイミングなんだ。
最近、運が落ちてきてんじゃねーか。



廊下のど真ん中で停止しているわけにもいかず、靴に履きかえている梅野の横に並ぶ。


黙々と手足を動かして、雑音だけが空間に散らばる。



「…夜市くん、ばいばい」

「……は?」

「え?」



沈黙を破ったのは梅野だった。



「ばいばいってなんだよ、帰る方向一緒だろ」



もうすでに、ふたりで数回は歩いている道のり。

それは梅野もわかっているはず。
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