オレ様黒王子のフクザツな恋愛事情 ~80億分の1のキセキ~

リア王のイベントDAY




ーー今日はリア王の月に一度のキラキラタイムの日。
ちなみにキラキラタイムとは、王子様を1日に10回褒める事によってコインゲットの為の回復ゲージ速度が24時まで二倍速になる。
つまり、1分でも早い段階で褒めまくれば、アイテムがより一層入手しやすくなる。
以前は1日中ゲームに食いついていたけど、今日もバイトがあるから昼休みに1人で屋上のいつもの場所へやってきた。



『ヒナタは今日も優しい!』
『ヒナタは今日も笑顔が眩しいね!』



コメント欄に名前を打っていて思ったが、あいつの名前を連呼してる時点で虚しさの嵐が吹き荒れている。
別にあいつを褒めたい訳じゃないのに、無理にでも褒めなければ二倍速のスイッチが入らない。



「くうぅぅ……。どうしてあいつの名前を褒めてるのよ。以前はハルトだったからやる気も一段階上だったのに……」



結菜がチャット画面でフリック入力しながらブツブツ文句を言ってると、屋上に現れた日向がそれに気づいて後ろから声をかけた。



「ねぇ」

「ヒナタになってからリア王を開く機会が減ったかもしれない。この名前にしてから王子様がなんかしっくり来ないのよね〜」



だが、結菜はコメント入力に夢中になってるせいで、日向の呼びかけに気づく様子もない。
日向は顔をしかめながらも諦めずに呼びかけた。



「ねぇ……」

「あーどうしよう。次は何て褒めようかな。なんかあいつを褒めてるみたいで言葉が出てこないよ。あっ、でもヒナタは捻くれてるあいつとは違って王子様だから素敵な言葉を届けたいなぁ」


「おい! さっきから呼んでるのに無視すんなよ」



日向は仏頂面のまま結菜のスマホをヒョイと奪い取った。
結菜はそこでようやく日向が隣にいる事を知る。



「あっ、あれっ? いま私を呼んでたの?」

「さっきから何度も呼んでるのに、ゲームに夢中になり過ぎて気づかないなんて酷くね?」


「ごめんごめんっ。実はさ、いまリア王がイベント中で。今朝は寝坊してアプリを開けなかったから1分でも早く褒めたいなぁ〜と思って。昼休みも残り7分しかないから、あと6回褒めなきゃいけないの。だからそのスマホを返してくれる?」



このイベントは明け方0時から24時までで、現在時刻は12時43分。
今の時点でイベント開始から半日経過してるから、二倍のチャンスが半分になっていて焦っていた。

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