意地悪な俺様上司と秘密の同居生活~異性には無関心だと思っていた彼だけど、結構独占欲強めの人でした~
「ひ、日吉……さん」
「随分楽しそうだな」
「え、ええ、まぁ……」

 突如現れた日吉さんは、明らかに作り笑顔を浮かべている。

(最悪……よりにもよって一番聞かれちゃマズい部分を……!)

 悪口を言って申し訳ないという気持ちがほんの少しだけあるし、立場的に弁解した方がいいのかもしれない。でも、昨日あれだけ面と向かって言ってるから今更取り繕ったところで意味は無いだろう。

 となれば、取るべき行動はただ一つ。私は何事もなかったように笑顔を向け、話題を逸らす事にした。

「随分お早いお戻りですね?」
「クライアントとの話が早く纏まったからな」
「そうですか」
「頼んでおいた仕事は終わったか?」
「ええ、勿論」
「流石、仕事が早いな。俺はこれから昼休憩に入るから、戻るまで俺の机の整理でもしててくれ」
「かしこまりました」

 日吉さんもそこまで気にしてないのか、それだけ言って去って行く。

 そんな私たちのやり取りを見て驚いている繭ちゃんと明音ちゃんはというと、日吉さんが去ってすぐに口を開いた。

「永茉ちゃん、すごいね。上司相手に」
「見てるこっちがハラハラしちゃったよ」
「まさかあそこで日吉さんが現れるなんて思ってなかったから私も驚いたし、話逸らすのに必死だったよ」
「でも、相手も流してくれて良かったね」
「ま、まぁね」
「っていうか、あの人が日吉さんか」
「確かに、カッコいいね」
「うん、先輩たちが噂するのも分かる気がする」

 日吉さんを認識出来た二人は揃ってそんな事を言い出した。

「ね? だから言ったでしょ? 顔だけなの。性格は最悪」
「そ、そうかな?」
「まぁ、私たちは話さないからよく知らないけどね」
「えー? さっきのやり取りだけでも十分分かるじゃない」

 カッコいいというところは同意を得られたものの、性格が悪いというところには同意は得られなかったのが少し不服ではあるけれど、そろそろお昼休みも終わりに近いので話はそこで終わりにして解散する事になった。
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