意地悪な俺様上司と秘密の同居生活~異性には無関心だと思っていた彼だけど、結構独占欲強めの人でした~
(まさか、同じ町内に住んでたなんて……!)

 朝、電車や駅で顔を合わせる事が無かったから同じ町内に住んでいるだなんて思いもせず、とにかく驚いた。

 けどまあ、同じ駅で降りるだけで、ご近所さんという訳では無いだろう。

「まさか同じ駅で降りるだなんて思いませんでした」
「全くだ」

 共に電車を降り、改札を抜けた私たち。

 流石にここからは別々だろう……そう思っていたのだけど、

「それで、お前はどの辺りに住んでるんだ?」
「私はここから徒歩五分程の距離にあるアパートに住んでますけど、日吉さんは?」
「俺も同じくらいの距離にあるマンションだ」
「……えっと、もしかして、一階にコンビニがある、あのマンションですか?」
「ああ、そうだ」
「私、そのマンションの向かいの通りを少し入ったところにあるアパートです……」
「そんなに近所だったのか」
「どうやら、そうみたいです……」

 なんと私と日吉さんは家がご近所さんだった事も判明した。

 そして今朝、電車や駅で顔を合わせなかったのは、私より一本早い電車で行っているからだと知る。

(こんな偶然って、ある?)

 方角が同じでご近所さんだと駅から自宅までの道のりも当然同じな訳で、必然的に一緒に帰る羽目に。

「しかしお前、何だって会社から距離のある所に住んでんだ? 地元ここじゃないならもっと近くに部屋借りれば良かったんじゃねぇの?」
「それはそうなんですけど、駅近くだとなかなか良い物件に巡り会えなくて、今住んでるアパートは徒歩圏内に駅やコンビニ、スーパーが揃ってるだけじゃなくて、築年数浅くて敷金礼金無しで部屋もそこそこの広さ! 総合的に見て一番良かったから選んだんです。それを言うなら日吉さんこそ、もう少し職場の近くに住んだら良かったのに……」
「俺が住んでるマンションは親戚が管理人なんでな、色々と楽だから借りてんだよ。別に少しくらい職場が離れてても問題ねぇし。ま、お互い様か」
「……そうですね」

 初めて顔を合わせたあの瞬間から、あまりにも接点があり過ぎて少し不気味に思うけれど、知り合いがいない土地での暮らしだから、近くに頼れる人がいると分かった事は良かったようにも思えた。
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