意地悪な俺様上司と秘密の同居生活~異性には無関心だと思っていた彼だけど、結構独占欲強めの人でした~
 日曜日、隣の県にあるテーマパークなので日吉さんが車を出してくれる事になり、日吉さんの住むマンション前で待ち合わせになった。

「すみません、お待たせしました!」
「遅せぇよ。すぐ近くで尚且つ部下のくせに、俺より遅いって有り得ねぇだろうが」
「……すみません」

 確かに、日吉さんの発言は最もだと思うけれど……待ち合わせは十時で今は十時二分。

 近くだからと少しのんびりし過ぎた私も悪かったとは思うものの、たった二分くらいで怒られるのは何だか面白くない。

 まあでも、今日は仕事みたいなものだし、おまけに車に乗せてもらうのだから、ここは下手に出ていた方がいいだろうと言い訳せずにただ謝っておく。

「こっちだ。着いて来い」
「はい」

 合流した私たちはマンションの駐車場へ向かい、黒色のミニバンの前にやってきた。

「これ、日吉さんのお車ですか?」
「ああ」
「結構良い車に乗ってらっしゃるんですね」
「まあな。ほら、遠慮しないで乗れよ」
「あ、はい……それでは失礼します」

 異性の車なんて、家族や親戚の人のくらいしか乗った事が無いから乗る前から少し緊張する。

(何か、これってデートみたい……だよね)

 異性の車の助手席に座ると、余計にデートっぽいような気がして変に意識してしまう。

「飲みモン、これでいいか?」
「え……?」

 運転席に座り、シートベルトを締める前に後ろの座席からコンビニの袋を手に取った日吉さんはミルクティーのペットボトルを差し出して来た。

「あ、はい。ありがとう……ございます」

 そこで私は気付く。本来ならば私の方が飲み物の一つでも用意するべきだったのでは無いかという事を。

(失敗した! 遅れてきた挙句に気も利かない奴って思われてる!)

 こうなるとやっぱり日吉さんに何を言われても言い返せないと思った私は項垂れつつも、貰ったミルクティーを一口飲んだ。

「よし、それじゃあ出発するぞ」
「よろしくお願いします」

 そして、車のナビをセットした日吉さんはシートベルトを締めて車を発進させた。
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