意地悪な俺様上司と秘密の同居生活~異性には無関心だと思っていた彼だけど、結構独占欲強めの人でした~
 それから後片付けの手伝いやらをしてからようやくパークを後に出来た私たち社員一同。

 明日も通常通りの勤務がある事から皆急いで帰っていく。

 私は勿論近所に住む日吉さんと共に帰路に着く為同じ電車に乗り込んだのだけど、乗ってから暫く、

「…………?」

 どこからともなく視線を感じた私は辺りを見回した。

「どうした?」
「いえ、その……何だか、誰かに見られてるような、感じがして……」
「何言ってんだよ? 気のせいだろ」
「そう、ですよね」

 私の行動を不審に思った日吉さんがどうしたのか」と尋ねてくれたので視線を感じた事を伝えてみるも、「気のせい」だとまともに取り合っては貰えなかった。

 だけど、その視線は電車を降りても続いていた。

 日吉さんと共に歩く中、私は時折後ろを振り返る。

「……まだあるのか?」
「え?」
「視線」
「あ……はい。でも、そんな感じがするってだけなので、やっぱり気のせいなのかも……」

 何度か後ろを気にして歩く私をやはり不審に思ったらしい日吉さんに再度問い掛けられた私はやっぱり自分の気のせいかもと口にした、その時、

「いや、今のは気のせいじゃねぇな。さっきから俺も感じてた。とりあえずこのまま家に帰るのは危険だ。撒くぞ」

 今度はその視線を日吉さんも感じたらしく、小声で「撒く」と言うのと同時に私の手を取ると、勢い良く走り出した。

 出来る限り人通りのある道を通りながら遠回りをして視線の主を撒こうとする。

 それから十分くらいそれを繰り返した頃、諦めたのか付いてこられなくなったのかいつの間にか視線は止んでいた。

「……どうやら撒けたようだな」
「はい……」

 私たちは辺りを見回した後で視線が止んだ事を確認し合う。

 その後も警戒しつつ私のアパートまで辿り着く。

「あの、今日も送ってくれてありがとうございます。だいぶ遅くなっちゃいましたね」
「ああ。まあ仕方ねぇだろ、あの状況じゃ」
「ですよね。あの視線は一体、何だったんでしょうか……」
「お前、誰かに恨まれてんじゃねぇのか?」
「ええ!? そんな事ないですよ! それを言ったら日吉さんの方が可能性あると思いますけど?」
「何でだよ?」
「えー、だって、女の人を蔑ろにするじゃないですか……」
「んな事ねぇよ。まあ何にしても、俺かお前のどっちが狙われてたのか分からねぇからな、用心するに越した事はねぇよ。つー訳で、明日は車で行く。駅で待ち伏せされても面倒だしな。迎え来るから勝手に出んじゃねーぞ」
「え? そんなわざわざ――」
「もし仮に俺が狙われてたとして、お前巻き込んで何かあっても寝覚め悪いからな、ついでだついで。それじゃ、寝坊すんなよ」
「あ、日吉さん――」

 視線の主が私か日吉さんのどちらを狙ったものだったかイマイチ良く分からなかった事もあって、用心した方がいいと明日は日吉さんと共に車で出勤する事になってしまった。
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