意地悪な俺様上司と秘密の同居生活~異性には無関心だと思っていた彼だけど、結構独占欲強めの人でした~
 翌日、眠い目を擦りながらも何とか時間に間に合った私は迎えに来てくれた日吉さんの車に乗り込んだ。

「おはようございます……」
「おー、よく寝坊しなかったな」
「しませんよ、仕事ですし」
「ま、お前は仕事に対しては真面目だもんな」
「まだ根に持ってるんですか? この前の事」
「別に、そんな事はねぇぞ?」
「嘘ばっかり」

 相変わらず弄ってくる日吉さんをよそに、シートベルトを締めた私はふと窓の外に目をやると、何だかまた誰かに見られているような気配を感じ取った。

(……気のせい、だよね)

 けれど、それはほんの一瞬だった事や日吉さんは気付いていなさそうだった事もあって、勘違いかと思い話題には出さなかった。

 日吉さんの車で出勤して裏手の駐車場から歩いて来ると、日吉さんの同期の人に見られていた私たちは「二人って仲が良い」だの、「付き合っているのか」だなんて揶揄われてしまうも、

「残念ながら俺は七海みたいなお子様に興味はねぇよ。住んでるところが近くだからついでに乗っけて来ただけだ。変な噂立てるなよ」

 私の事を『お子様』だなんて失礼な発言をするもんだから、

「そうですよ、私だって日吉さんみたいな女の人の気持ちを分かってない人に興味は無いので、カップリングにされるのは迷惑です」

 少し苛立った私も負けじと意見した。

 だけどこれが逆効果だったのだ。

「お前ら、息ぴったりだな。日吉に意見出来る七海は大した大物だよ。あはははは」

 私たちのやり取りは『じゃれ合い』のように見えたらしく、可笑しそうに笑いながら行ってしまう。

「おい七海、お前が余計な事言うから悪化しただろーが」
「私は本当の事を言ったまでです」
「ったく、可愛げのねぇ後輩だな」
「悪かったですね、可愛げが無くて」

 若干不穏な空気漂う中、お互い憎まれ口を叩き合いながら中へと入って行った。
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