意地悪な俺様上司と秘密の同居生活~異性には無関心だと思っていた彼だけど、結構独占欲強めの人でした~
 仕事は至って順調に過ぎていき、お昼になった私は会社のすぐ近くにあるコンビニまでお弁当を買いに来ていた。

「今日から発売の限定シュークリームも買えたのラッキー」

 お弁当にプラスしてデザートに今日から発売された苺のクリームが入ったシュークリームを買えて上機嫌で会社へ戻ろうと歩いていると、

「…………」

 またしても、どこからともなく誰かに見られているような気配を感じ取った。

 昨日の帰りといい、今朝といい今といい、場所がバラバラなのにどこに居ても視線を感じる事に不安が募る。

(……狙われてるのは、私?)

 昨日や今朝は日吉さんと一緒に居たからどちらを狙ったものなのか分からなかった。

 けれど、今は私一人。

 気のせいでなかったとすれば、見られているのは私という事になる。

 そう思うと急に怖くなった私は逃げるように会社へ駆け込んだ。

「七海、お前弁当買いに行くなら言えよ。俺のも頼んだのに」

 中へ入るとちょうどコンビニに行くところだったらしい日吉さんに遭遇。

「ひ、日吉さん……」
「ん? どーした?」
「あ、あの……今も、誰かに見られている気がして……」
「また視線を感じたのか?」
「は、はい……」

 私の話を聞いた日吉さんはすぐに外へ出て行くも、

「……流石に、分かりやすい場所に居るわけねーか。やっぱり、狙われてたのはお前じゃねーか、七海」

 辺りを見回しても誰の気配も感じなかったようですぐに戻って来た日吉さんは、ハァと溜め息混じりにそう言った。

「……私、誰かに恨まれてるんでしょうか?」
「いや、そりゃ分からねぇけど……まあ、俺じゃねぇんだし、恨まれてるって事はねぇと思うがな」
「恨まれてないなら、原因は何なんでしょうか?」
「……まあ、考えられるとすれば、お前を気になっている奴がいる……とかか?」
「え?」
「まあ、七海に限ってその線は無いと思うけどなぁ」
「なっ! 何ですかその言い草! 失礼ですよ? そりゃ、私だってそんなの無いと思いますけど……」
「まあ、世の中モノ好きもいるからな。一応女だし、絶対無いとは言い切れないだろ」
「…………」

 何だか酷い言われようだけど、今はそんな事を議論してる場合じゃない。

「……どうしよう……警察に相談……とか?」
「いや、まだハッキリと決まってねぇ上に実害も無い状況じゃ、相談するだけ無駄だろ」
「そ、そうですよね……勘違いかもしれませんもんね」

 一体どうすればいいのか困っていた私に日吉さんは、

「とにかく、視線の正体がハッキリするまでお前は外で一人になるな。分かったな?」

 一人で行動しないように言い付けてきた。
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