意地悪な俺様上司と秘密の同居生活~異性には無関心だと思っていた彼だけど、結構独占欲強めの人でした~
「一人になるなって言われても……そりゃ私だって怖いから一人になりたくないけど……無理ですよ……そんなの」

 現実的ではない日吉さんの言葉に「無理」だと決めつける私。

 そんな私に日吉さんは言った「無理な事は無い」と。

「行き帰りは俺が一緒に居るし、休みの日も用がある時は呼べばいい。近所だしな、遠慮する事はねぇよ」
「そ、それは流石に……」
「何だ? 俺じゃ不満だって言うのかよ?」
「いや、そうじゃなくて、そこまでしてもらうのは申し訳無いって事です。いくら近所だからって……」

 正直、日吉さんの提案には驚きしかない。

 近所って言ってもそれだけだし、何より一応職場の上司だし、流石にそこまでしてもらうのは気が引ける。

 いつまでも私が渋っていると、

「お前な、今はそんな事言ってる場合じゃねぇだろう? ただ見てるだけってなら別に構わねぇけど、それがエスカレートしない保証も無い。恨まれてるとしたら危害を加えられるかもしれねぇんだし、好意を持ってるとしたら、それこそ何してくるか分からねぇんだぞ?」

 いつに無く真剣な表情で諭すように言ってくるもんだから、それ以上何も言えなくなった。

「分かったか? 返事は?」
「は、はい……分かりました、よろしくお願いします」

 そして、成り行きで日吉さんに頼る事になってしまった私だけど、密かに嬉しく思っていた。

 いつも意地悪で憎まれ口ばかりなのに、いざって時は頼りになるし何よりも、心配してくれてるっていう優しさが垣間見えたから。
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